第78期名人戦七番勝負第5局1日目 渡辺明二冠の振り飛車で力戦模様

渡辺明二冠がこの大事な対局で相居飛車模様から振り飛車に転じた。これは言わば広義の陽動振り飛車である。豊島竜王・名人の棒銀に対し、8筋の飛車先の歩を五段目まで伸ばしてからの飛車回りは珍しい。まずは渡辺明が飛車を振るとは微塵も考えなかった。豊島竜王・名人の角換わりに恐れをなしたのか。あるいは、先だっての棋聖戦で(結果敗れたが)藤井棋聖相手に研究を出し尽くしてしまったのか。王座戦の挑戦者決定戦で振り飛車の久保九段に敗れたことも影響しているのか。局後の述懐を待たねばなるまい。

本局はさらにとんでもない展開になる。29手目の豊島竜王・名人の左端9筋への桂跳ね、それを受けた渡辺明二冠の居玉戻し。こんな端桂に対する2手損で居玉、まるで初心者のような将棋である。もはや互いに研究範囲からはとうに外れ、未知の力戦型である。形勢は豊島竜王・名人優勢、消費時間はほぼ拮抗していたが、封じ手に1時間かけた豊島竜王・名人が1時間10分マイナス。終盤で一度形勢を互角にして、最終盤で勝ち切る豊島将之流のまとめができるか?明日、名人位にリーチをかけるのはどちらだ。

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