将棋界の一番長い日という言い方はここ2年ばかりは当てはまらなくなってきた。該当する者がわずか10名程度のA級順位戦だけが注目の舞台であるわけでもないし、挑戦や降級する者だけが主役であるわけではない。私が嫌いだった父親が題材として文章にしていたこともあり、私自身は今後、この言葉は使わないことにする。
21時16分、広瀬章人八段が豊島将之竜王に対して投了を告げた。この瞬間、A級初出場にて斎藤慎太郎(画数が多いのでさいたろうにする)の名人挑戦が決まった。今期A級で唯一土をつけられた竜王の最大限の後押しがあったさいたろう八段は足を豊島将之に向けて眠れない。挑戦者に決まったが自身の佐藤天彦九段戦は優位を築きながら大熱戦。形勢は押していても消費時間に1時間以上失っている。この終局は24時15分。もう私はおねむの時間なのである。
さいたろう八段は男前でいつも関西なまりの穏やかな口調で話をする。解説もわかりやすく好感度は将棋界屈指だろう。好きを通り越して愛している、と口にする程の詰将棋愛好家で詰将棋解答選手権で連続優勝(第8・9回)している。誰も話題にしないが第16回第2ラウンドでは優勝した藤井聡太七段(当時)より5分早く解答し満点を叩き出した。そのようなバックグラウンドがあることもあり終盤が強みである。全体を通して端正な将棋を指す印象だ。
名人戦の予想はまだ早いし大部分が渡辺明名人の防衛のりだと思うが、必ずしもさいたろう八段不利とは考えていない。また近くなったら考察する。
今年もA級順位戦が無事に終わった。豊島将之竜王のリターンマッチがならなかったのは無念でならないが、来期の順位は2位。必ず挑戦者になってほしい。
8勝1敗 さいたろう八段 挑戦
6勝3敗 豊島将之竜王、広瀬章人八段
5勝4敗 糸谷哲郎八段、菅井竜也八段
4勝5敗 佐藤康光九段、佐藤天彦九段、羽生善治九段
2勝7敗 稲葉陽八段 降級
1勝8敗 三浦弘行九段 降級