第94期棋聖戦五番勝負第2局 史上最強棋士に七冠達成後、初の土をつけたのは驚異のC2・6組 佐々木大地七段だった

19時21分、藤井聡太七冠投了。藤井聡太もこんな負け方をするんだ。久しぶりに指し手の解説も行いたい。

藤井聡太のいつもの異常な勝利への執念がやや欠けていたか、普通に大地の将棋膂力に尋常ならざるものがあることを示したか。この将棋で大地が間違いなく超一流棋士であることが明らかになった。王位戦と併せた12番勝負が俄然興味深くなった。

こんな強豪が順位戦C2組・竜王ランキング戦6組にいるとは信じられない。タイトル挑戦でランクアップさせるように制度改革をするべきである。ま、それやっちゃったら、藤井聡太は間違いなく10代での名人誕生だったろう。

※※※
AI判定は大地がやや指しやすいと出ているが、大地玉は極めて不安定な状態である。藤井聡太相手では到底勝てるとは思えない。3日前の村田戦▲6四銀は忘れようにも忘れられない。案の定、大地は盤石の寄せで押し切ることはなく、終局までの約1時間は見ごたえのあるジェットコースター展開だった。

藤井聡太先勝を受けた本局の先番は佐々木大地。この将棋を勝たないとストレート負け間違いなしであり、早くも追い詰められているところで起用したのは大地必殺の相掛かり。後手に△8七歩を打たせるのが構想だったようで、自玉の整備をほとんどせずに右銀を繰り出す。

先手は8筋に歩が立つので、後手は飛車の斜めラインを狙われると案外に脆い。まずは大地の先制攻撃成功である。

大地の指し手はさらにアグレッシブになる。後手の攻め駒が飛車銀と持ち駒の角だけで見かけほどは腰が入っていないことを見切っていたか、後手の攻め駒を引き出しつつ左で馬を製造し香車得。2図では普通の人ならば▲4七歩を打ちたくなるが大地は構わず▲7二馬と銀を持ち手駒に加えた。

△5六成銀▲同歩△4七銀と打ち込まれても揺れず▲7三馬と戦力を増強しつつ馬の利きを自陣にのばす。藤井聡太は△3九飛打から強攻を続けるが攻め急がされている。銀桂香損だからね。▲6五桂と先手玉の逃走路確保に入ったところでは先手必勝にも思えたが、まだまだここからが面白い。

自玉が最速でも2手スキであることを利し、攻め駒3枚ながらも攻勢を続ける藤井聡太の前に大地がついに失着。3図の▲4八歩は第一感だろう。が、本譜の△4七金▲6八玉△7六角成とされると厄介だ。でもって△4七金と打たれても問題なさそうな▲4八銀と比較しての▲4八歩。2分の考慮での着手は大地にしては軽率。これで形勢は藤井聡太に振れた。

大地は損切りしつつ竜を自陣に利かせて防御に回る。聡太が4図の前の△7五銀打を逃したところで、大地は理解不能な▲2五桂。ここは▲5二金の一手では単純な斬り合いで、異常天才に勝てる道理がないと考えたのかもしれない。

七冠は△7六歩と叩き▲8六玉にばっさりと△7八竜。大地は時間のない中で見事に正着。5図の▲5五角が絶妙の切り返しで、△同銀だと詰めろが外れてしまうので竜を外してよし。△1二玉としてもやはり竜を外せば、今度は角の利きがあるので、先手玉は詰めろではない。この変化を前提に▲2五桂を打った可能性すらあるのではないかと思わせる手順の妙で、形勢が再び大地へ。

6図の△2四歩は本譜の▲3一飛で受けなしになった。

さて、棋聖戦は1日制の五番勝負。藤井聡太をタイトル戦で下ろすには棋聖・王座・棋王・叡王の4タイトルしか可能性はない。王座はまだ永瀬だし、大地があと二つ、このような勝ち方が出来るかどうか全く確証はないが。

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