ついに「街道をゆく」をゆくことにした。普通に読んでは面白くない、絶筆であり最終巻である濃尾参州記から読んでいる。面白い。日本語の豊かさを感じる。恥ずかしながら桶狭間の正確な場所を知らずに60年以上日本人として生きていた。こんなことではいけない。
わずか80ページで「未完」で締めくくられている。残りは安野光雅の挿画、取材中の司馬のカラー写真、安野光雅・村井重俊の「余話」という構成になっている。
最後の旅は、名古屋から豊明、岡﨑、豊田。。。本来は、美濃(濃)、尾張(尾)、三河(参)だったので、「尾」と「参」の一部のみで未完となってしまった。斉藤道三、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康ら戦国のスターが群がり出た地を司馬が歩くのである。完成していたら、、、と思わずにはいられない。
冒頭は「桶狭間の戦い」に関する記述が続く。秀吉の一代を描いたものといえば「太閤記」。ほとんどは“真偽さだかならぬ”ものであるが、意外にも司馬は、小瀬甫庵の『太閤記』を比較的信用しているようである。秀吉と甫庵が同時代の人物だからであろうか。
本巻が週刊朝日に連載されていたのが1996年1~3月。司馬遼太郎が亡くなったのは1996年2月12日、72歳。「街道をゆく」がスタートしたのは、1971年、彼が47歳の時。25年続いた連載だった。