脳内戦艦サナエ、出撃!

うけたw

【#佐藤優のシン世界地図探索136】脳内戦艦サナエ、出撃!<vsトランプ大統領戦を解説>(週プレNEWS) - Yahoo!ニュース
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSIN

国会答弁中の高市首相。この瞬間、「脳内戦艦サナエ」が出撃した(写真:AFP=時事)

ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!

*  *  *

――高市早苗首相がトランプ米大統領と会談しました。どん底の日本を救うために出撃したわけですが、このバトルの解説をお願いします。
佐藤 まず、高市首相が台湾有事に関して国会答弁を行ないました。中国が台湾を支配下に置くためにいろいろな手段があると説明した上で、「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と答えたんですね。
ここで飛び出した「戦艦」という単語ですが、現在、世界各国で戦艦というカテゴリーはありますか?

――1991年の湾岸戦争において、米戦艦二隻がペルシャ湾に出撃したのが最後であります。現在、その二隻は博物館として係留公開されています。
佐藤 その通りです。現在、戦艦は使われていません。そもそも中国は戦艦を持っていません。だから、あの戦艦発言には、外務省も法制局も関与してないんですよ。官僚の書いた文章ならば、「戦艦」など絶対に出てきません。

――すると、首相の頭の中だけの戦艦……。
佐藤 はい。だから「脳内戦艦サナエ」ですね。奈良の鹿を蹴っ飛ばしている延長線上だと思えばいいんじゃないですか。幻の中で生きているんですよ。

――その「脳内戦艦サナエ」の、対米トランプ大統領との戦いはどうなったんですか? 報道では大成功のような形となっています。
佐藤 あれは日米間の実質的な懸案が生じないような枠組みでしたからね。外務省はあくまでトランプ氏との友好関係を構築することを目標にしていました。だから、成功は予め約束されていたようなものですよ。

――それでも日本中が、日米会談は大成功だと騙されてるんですよ。
佐藤 とにかくまず、ルールがあるんですよ。国賓、次に公賓、そして公式実務訪問賓客と賓客のランクが分かれています。今回、トランプは公式実務訪問賓客として招かれました。これは準国賓となるんですね。

――素晴らしい日本語。
佐藤 しかし、準国賓で来ているにもかかわらず共同声明が出ないとか、共同記者会見をやらないのは前代未聞です。

――なんでそうなったのですか?
佐藤 柚木麻子の小説に『伊藤君AtoE』という作品があります。伊藤というシナリオライター志望の男が、6人の女性を翻弄する話ですが、その伊藤は一度もシナリオを書いたことがないんですよ。なぜなら、書くと他人に批評されるから。批評されることが嫌だから、絶対に書かないシナリオライターなんです。

――それがまさに今回の日米会談だと。
佐藤 そうです。だから、絶対に敗れることがないんです。参加してませんからね。勝負に負けない方法です。

――確かに!!
佐藤 パチンコに絶対に負けない方法は、パチンコ屋に行かないことです。

――共同宣言を出さなかったのは「フワフワな状態にしてトランプが帰国しても自慢できるように」といった報道もありました。
佐藤 嘘ですよ。だったら、なぜ一枚紙の合意文書に署名したんですか? あれには石破茂前首相がやった成果が書いてありました。だから、そんな嘘を付いて糊塗(こと)するのは止めろと言いたいですよ。

――すると、これは「脳内戦艦サナエ」の巨砲ならぬ、虚報。
佐藤 また、共同記者会見を行わなかったのは、時間がなかったから、としています。しかし、ヘリコプターに乗って米海軍航空母艦に行く時間があって、なぜ国民に説明する時間はないんですか?

――結構時間がありましたね。これは2連装虚報です。
佐藤 だから結局、高市さんを人前に出せないからなんですよ。これもトランプが会談を嫌がっていると言われていますが、トランプは全然嫌がっていませんよ。

――トランプほど記者会見が大好きな大統領はいませんよ。「脳内戦艦サナエ」は、潜水可能戦艦でもある。人前に出られない高市首相は、日本の首相が務まるのですか?
佐藤 それをカバーするのが官僚の仕事です。だから、首相官邸や外務省は日米会談が上手くいったとしか言いませんよ。それが仕事ですから。
例えば、太平洋戦争に至るまでの道を考えてみてください。それまで日本が近代戦で最後に戦ったのは、1905年の日露戦争で、次の本格的な戦争は1939年のノモンハン事件ですよね? その間、第一次世界大戦もありましたが、青島や南洋諸島で小規模な争いをしただけです。

――はい。ノモンハン事件では、ソ連軍相手に大日本帝国陸軍で最強の関東軍があっさりと負けました。
佐藤 34年間、戦争をやっていない軍隊の評価基準は何になると思いますか?

――鉄拳制裁とケツバットの痛さですか?
佐藤 それよりも書類を書くのがうまいとか、人脈づくりがうまいとかそんなことじゃないですか。
中国大陸に3年くらい将官が赴任していると、交代の半年前に必ず作戦をやります。しかし、その作戦は、企画立案と実行して評価する人が同じ人なんです。すると、その成果はどうなりますか?

――ずっと勝利ですね。
佐藤 そうです。成功か大成功、勝利か大勝利のいずれかしかありません。その集積が太平洋戦争につながるんですよ。

――それは滅亡への旅立ちです。
佐藤 今回、日本は帝国陸軍の伝統に踏まえて行動しています。繰り返しますが、首相官邸や外務省が、日米会談は上手くいったとプロパガンダするのは当たり前です。仕事なんですから。
絶対に売れないアイドルや芸人がいたとしても、「素晴らしいアイドルです」「面白い芸人です」ととりあえずアピールしますよね。それと同じです。
さらに問題は、それをメディアがそのまま報道しながら、全く自分たちで評価していないことです。これはメディアの問題です。ウクライナ戦争以降、日本のメディアは変わってしまったんですよ。

――それは、第二次世界大戦中の大新聞社と同じでは?
佐藤 そうそう。だから、ある意味では大新聞社が正しい伝統に回帰しているわけです。

――それって、日本は伝統に従って滅亡に進んでいることだと。
佐藤 もう、本当にすごいですよね。「脳内戦艦サナエ」でハリス旋風を思い出しましたよ。

――ハリス旋風?
佐藤 トランプとの直接TV対談で、「もうバイデンじゃ無理だ」と副大統領のカマラ・ハリスが大統領候補として出てきました。すると「ハリスならば勝てる」というハリス旋風が起きたのを覚えていませんか?

――確かに昨年の夏、反トランプメディア総動員の大騒ぎでありました。
佐藤 でも、しょせんハリス旋風なんてなかったんですよ。

――最初から何もないんですか?
佐藤 何もありませんでした。
いま、サナエ旋風が起きています。しかし、あの時のハリス旋風なんか、いままで皆忘れていましたよね。「ハリス、WHO?」とね。

――ハリスの再売り出しキャンペーンは見事に玉砕してました。すると、日本では「高市、WHO?」となる?
佐藤 来年の今頃になると、「去年の高市旋風は何だったのだろう?」となると思いますね。

――「脳内戦艦サナエ」、撃沈。
佐藤 いまのままだと、もたないでしょうね。

――以前の連載で、1年もてば3年やれると佐藤さんはおっしゃっていました。岸田さん、石破さんの残したことを継承すれば大丈夫なのでは?
佐藤 そもそも、継承するかしないかがわからないんですよね。その場の雰囲気で言っているだけのような気がするんですよ。
だから、意図的にやっていることは軌道修正が可能なんですが、無意識のうちに進んでいると、軌道修正すらできません。

――高市さんが無意識でやっているとすれば、ゾンビではないですか。
佐藤 ちなみに、サナエブームはどれくらい続くと思いますか?

――「脳内戦艦サナエ」の航続距離ですね。
佐藤 田中真紀子さん、マッキーもブームがありましたね。たしか、マッキーブームは4ヵ月くらいでした。

――すると、サナエ旋風は来年春くらいまでか……。
次回へ続く。次回の配信は2025年11月28日(金)予定です。

取材・文/小峯隆生

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