◆トランプ訪中、“団長だけ先に寂しく帰国”の巻◆
今回のトランプ大統領の支那訪問は、まさに“大名行列”のようだった。トランプ氏を先頭に、政財界の大物たちがずらりと並び、誰もが「どれほどの大型案件が動くのか」と注目していた。
ところが、訪問が終わってみると、思わぬ“後日談”が人々の笑いを誘っている。
まず、イーロン・マスク氏。
上海では母親に会い、そのうえ
「もっと多くの人々が支那を旅行すべきだ(More people should visit China)」
と語った。
火星移住まで真剣に考えている男が、支那ではまず上海に定住している母親メイ・マスク(Maye Masuku、支那語表記は梅耶·馬斯克)に会いに行く。
このあたりの人間くささと「媽宝」(お母さんっ子)ぶりが、妙に愛嬌がある。
どれほど世界を動かす人物でも、母親の前では“ちゃんと顔を見せに来る親孝行の息子”なのかもしれない。
しかも帰るどころか、支那観光の魅力まで熱心に語り始める様子を見ると、もはや実業家というより支那旅行促進親善大使のようでもある。
NVIDIAのジェンスン・フアン氏は、すっかり支那グルメの虜になったようだ。
ローカルフードを楽しむ黒ジャン姿は、AI半導体の覇者というより、街のレストラン街を制覇した美食家そのもの。
Appleのティム・クック氏は、北京、上海、杭州のApple Storeを3店舗視察。
さすが現役CEOだけあって、仕事はきっちりこなしている。
とはいえ、その姿には「現場を歩く経営者」と「旅慣れたベテラン出張族」の両方の空気が漂う。
FOXニュースの司会者まで支那に残った。
せっかくの支那訪問で生まれた余暇を活用してニュースを追っていたのだろう。
そう思って見ていたら、いつの間にか追っていたのはニュースではなく卓球のボールだった。
しかも、プレイ中のその姿は驚くほど真剣だ。
あそこまで夢中になっている様子を見ると、もはや現地取材というより、支那で束の間の解放感を楽しんでいるメディア人のようにも見えてくる。
そして、トランプ氏の次男 エリック・トランプ(Eric Trump) と、その妻 ララ・トランプ(Lara Trump) は万里の長城へ。
これはもう完全にファミリー観光である。
こうして、政財界の大物たちはそれぞれ支那各地へ散っていった。
気がつけば、まるで超豪華な「支那周遊ツアー」である。
そして、その一座を率いてきた“団長”のように見えてしまったのが、トランプ大統領本人だった。
ところが、その“団長”だけは、皆を現地に残して、さっさとアメリカへ戻っていく。
ネットでは、こんな愛ある皮肉も飛び交った。
「みんなが支那の旅を満喫しているのに、トランプさんだけ先に帰って仕事か。まるでアメリカ黄金時代の働き者の親父みたいだな。」
たしかに、そんな雰囲気はある。
皆がまだ旅の余韻に浸っているのに、ひとりだけ腕時計をちらりと見て、
“Well, back to work.”
とでも言いそうな、あのせっかちな感じ。
その後ろ姿を日本から眺めていると、どこか妙な既視感もある。
昭和の頃、近所に一人ぐらいいた、あの“じっとしていられない働き者のおじいさん”だ。
みんなが、「せっかくなんだから、もう少しゆっくりしていけば?」と言っても、
「いやいや、そんな暇はない。」
と、そそくさ帰っていってしまう。
世界を相手に強気な言葉を放ち、人を圧倒するイメージの強いトランプ氏が、こんな場面では妙に人間くさく、可愛げすら感じさせる。
大勢を引き連れて華々しく登場し、最後はひとり寂しそうに仕事へ戻っていく——。
エアフォース1(Air Force 1)に消えてしまったその後ろ姿に、どことなく、あの懐かしい時代の“働き者の背中”が重なって見えた。

