行動計画は料理のレシピと同じ
量が足りていないのに質を議論しても意味がない
⇒量をやり切れ!
このことは私も年末年始休暇中の片づけに必ず適用する。

■はじめに
「なぜだ……。毎月きちんと進捗管理しているのに、目標達成できない」
ある製造業の営業部長は、頭を悩ませていた。部下の行動計画を一緒に立て、週次でフォローし、月末には振り返りも行っている。マネジメントの教科書通りにやっているはずだ。なのに、結果が出ない。いったい何が問題なのか……。
そこで今回は、進捗管理しても目標達成できない本当の理由と、ある50代マネジャーが実践した指導法について解説する。部下の目標達成に悩むマネジャーは、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
■正しく進捗管理しても目標達成できない理由
結論から言おう。進捗管理しても目標達成できない最大の理由は、部下が自分で立てた行動計画をやり切っていないからである。
冒頭の営業部長のケースを見てみよう。部下の若手営業パーソンと一緒に、月間の行動計画を立てた。本人の意向を尊重し、無理のない計画にした。
・訪問件数:月間50件
・提案件数:月間8件
・キーパーソンとの接触件数:月間15件
「この計画でいけそうか?」と確認すると、「大丈夫です。やり切ります」と力強く答えた。部長も「君の意向を尊重する。やり切れるようにサポートするから」と伝えた。
ところが、月末に蓋を開けてみると、結果はこうだった。
・訪問件数:38件(計画比76%)
・提案件数:6件(計画比75%)
・キーパーソンとの接触件数:11件(計画比73%)
すべての項目で、計画を下回っている。これでは目標達成できるはずがない。
■「行動の質を上げます」の落とし穴
問題はここからだ。部長が「なぜ計画通りにできなかったのか」と尋ねると、部下はこう答えた。「来月は行動の質を上げます」
部長は続けて聞いた。「具体的に、どういう風に質を上げるんだ?」
すると、部下は黙ってしまった。答えられないのだ。これは珍しいケースではない。目標未達の振り返りで「質を上げます」と宣言する部下は多い。しかし「どうやって?」と聞くと、具体的に説明できない。なぜなら、行動の質を上げる方法は、そう簡単には見つからないからだ。
行動の質とは、たとえば営業なら「アポイント獲得率」や「提案の成約率」のことである。これらを上げるには、トークスクリプトの改善、ヒアリング力の向上、提案資料の精度アップなど、相当な工夫と訓練が必要だ。
「質を上げます」という言葉は、一見すると前向きに聞こえる。しかし実態は、量をやり切れなかった言い訳であることが多いのだ。
■料理のレシピに例えて注意した50代マネジャー
ここで、ある50代マネジャーの話を紹介しよう。彼は部下にこう注意した。
「これは基本だぞ。行動計画は料理のレシピと同じだ」
部下がキョトンとしていると、マネジャーは続けた。「たとえば肉じゃがを作るとする。レシピには『じゃがいも4個、玉ねぎ1個、にんじん1本、肉200グラム、だし汁200ml、砂糖大さじ3、みりん大さじ1、酒大さじ1、しょうゆ大さじ5』と書いてある。ところが君は、砂糖大さじ2、みりん小さじ1、しょうゆ大さじ2しか使わなかったとしよう。それで『味がイマイチだったので、次は調理の質を上げます』と言っている。おかしいと思わないか?」部下は、ハッとした表情を見せた。
「まず、レシピ通りの材料を揃えろ。分量を守れ。それでも味がイマイチなら、そのとき初めて調理法を見直せばいい。材料も分量も足りないのに、調理の質を議論しても意味がないんだ」この指摘は、部下の心に深く刺さった。
■まずは「量」をやり切れ
多くの人は、すぐに「質」や「やり方」を変えようとする。しかし、それは間違いだ。まず自分に問いかけてほしい。
「行動計画の量は、計画通りに達成できているか?」
量が足りていないのに、質を議論しても意味がない。レシピ通りの材料を使わず、分量も守らなければ、期待した味にはならない。「なぜうまくいかないのか」と悩む前に、まずレシピ通りやったのかを確認すべきなのだ。
冒頭の50代マネジャーは、この基本を徹底した。部下に「まず量をやり切れ」と指導し、毎週の進捗確認では「計画通りの行動量ができているか」だけをチェックした。
すると、不思議なことが起きた。量をやり切ることで、自然と行動の質も上がっていったのである。訪問件数が増えれば、商談経験が増える。商談経験が増えれば、トークが磨かれる。料理でも一緒だ。最初はぎこちなくても、慣れていけばドンドンスムーズに調理ができるようになっていく。ダンドリもうまくなっていく。これが「量質転化の法則」だ。
まずは決めた量をやり切る。それでも結果が出ないときに初めて、中身や質を見直す。これが目標達成の鉄則である。

