雇ってはいけない人を判別する

通常、採用の面接官は、「採用に値する人」を振り分けるのが目的だ。
が、正直なところ、新卒採用では「だれを雇うべきか」は、ほとんどわからない。
実績に相当するものが、学歴程度しかないからだ。

では、何もできないのかというと、そうではない。

「雇ってはならない人」を通さない、という役割がある。

その「雇ってはならない人」を見分ける方法の一つが、
「「話のつじつまが合わない部分」をついたときの反応を見ること」であった。

例えば、学生が、志望動機を

「豊かな社会に貢献する」という企業理念に共感しました。
私は実家があまり豊かではなかったので、皆が豊かな生活ができる世の中を作りたいと思っています。

といった(テンプレっぽい)話をしたとする。

もちろん、テンプレっぽい、というだけで落としたりはしない。
が、この話、信じてよいのだろうか。

そこで面接官は、具体的に聞く。

「豊かな社会」と「豊かな生活」について、あなたなりの具体的な定義をしていただけますか?

「具体性」を問われると、少なくない学生が、定義ができないことがある。

そういう学生には、

「豊かな社会」に共感したと、先ほどおっしゃいましたが、一体、何に共感したのですか?雰囲気に共感したということですか?

と、少々突っ込んで問いただす。

あるいは、

豊かな社会とは、皆が不足なく暮らせる社会で…

と、抽象的な言葉で逃げようとする学生にも、

皆が不足を感じない社会なんて、そもそもあり得ると思いますか?

と、現実との矛盾点を問う。

ただ、内容そのものは、正直何でもよいのだ。
我々は、価値観ではなく、能力と性格を見ているのだから。

つまり、ビジネスでよくある、
「会議で突っ込まれる」とか
「お客さんから聞かれる」とか
「部下から矛盾を突かれる」などといった、
少々苦しいシチュエーションを、この場で擬似的に作り上げるのが目的なのだ。

そして、こういうところでは、人間の本性が出る。
「こまったなあ」という表情を浮かべる学生もいる。
焦って凍りついてしまう学生もいる。

中には、

雰囲気で共感していました、すいません。でも気持ちは本物です。なぜなら~

と、謝れる人もいる。

それならいい。
謝れることは、社会ではとても重要なことだし、能力不足は、育成でなんとでもなる。

が、少なからずいるのが、こちらに怒りの矛先を向ける人だ。
表情と、口調が変化する。

「いえ、そういうことではなくて。誤解していただきたくないのは……」
と、こちらの誤解のせいにしようとする人。

「私が申し上げたのは、豊かというのは経済的な意味だけではなくて——」
と、「話のわからない人たちだ」、とでも言いたげに、最初に言ってもいない前提を突然持ち出してくる人。

「ダボス会議で言われていたのは……」
などと、別の権威を持ち出して、質問に答えず、話をすり替えようとしてくる人。

反論するのは全く問題ないのだが、感情的なのはいけない。
面接の場で、何回かこのような反応が見受けられたら、

彼らは
「謝れない」
「間違いを認めない」
「頑迷である」
という特性を持った人たちの可能性がある。

彼らはどんなに学歴が良く、ペーパーテストができても、基本的には落とす。
ビジネスでも、アカデミックでも一緒だと思う。

「謝ったら死ぬ」とまでは行かないが、重要なときに「自論の欠点/間違い」を認められないのは、後々、顧客対応や社内のやりとりなどで、大きなトラブルを引き起こす可能性が高いからだ。

面接官は、単に話の辻褄が合わない部分を突いただけ。
圧迫したわけでも、叱ったわけでも、人格を否定したわけでもない。

でも、このタイプの人はそれらを区別できない。
「論理の指摘」を「人格への攻撃」として受け取ってしまう。
こういった性格面での未熟さは、10年経っても、20年経っても、だいたい治らない。
柔軟ではない人は、年配も若者にもたくさんいる
余談だが、よく、「若者は柔軟だ」と言われる。
が、実際に様々な採用に携わると、決してそんなことはない、と気づく。

現場で見聞きした限りでは、おっさん、おばさんと、若者は大して変わらない。
事実、「年を取ると頑固になる」という話には、大したエビデンスがない。

おそらく、直接なにか言われたときに
「黙っている」とか
「反抗しない」
といった若者が見たことが多いからなのだろうが、それは彼らが、柔軟だからではなく、経験からくる「意見」を持っていないだけの可能性が高いのではないだろうか。
それは柔軟さではない。

おそらく、柔軟さや素直さ、謝れるかどうか、といった性質は、年齢よりも「個人差」のほうが圧倒的に大きい。

なんでも「はい、はい」と、無条件に受け入れてしまうのは素直ではなく単なる阿呆だ。

だが、話の矛盾や欠点を突かれて、相手に怒りの矛先を向けたり、謝罪して修正をできないような人間は、組織の人間関係や対顧客の関係を危うくしかねない。

あくまでも冷静に、「組織に絶対に入れてはいけない人」を見極めることは、かなり重要なのである。

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